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外国企業で快適に働くための5つのノウハウ

私がドイツで最初に勤めた会社は、現地の通信ソフト開発会社です。

この会社には、1998年11月から2002年9月までの約4年間、日本市場担当営業スタッフとして働き、日本人とドイツ人との間のコミュニケーションサポートを担当。そこで、成功と失敗を数え切れないほど経験しました。

この章では、その体験から学んだ、「外国企業で快適に働くためのノウハウ」について触れたいと思います。


)「自分が本当にやりたいことを見つけよう」


私は、落ち込み始めると、とめどもなく、まるでブラックホールの中に入り込んでいくように、どこまでも落ち込み続ける性格で、現実世界に戻るためには、常に他人の力が必要なタイプです。

ドイツ企業に入社した当初も、何か辛いことがあると、すぐに落ち込んでしまい、そこから立ち直るために、夫や同僚や友人等、話を聞いてくれる人を探しては、悩みごとをぶちまけていました。

入社して、1年が過ぎた頃、外国人女性の同僚が3名になりました。
フランス人のオードリーと、スペイン人のマリアと、中国人のリンです。

もちろん私たちの共通語はドイツ語。
しかし、ドイツ人以外の人たちとドイツ語で会話するのは不思議な感覚で、また、彼女たちのドイツ語にはそれぞれの言語の訛りが入ったりするため、おかしな会話をすることもしばしば。

ドイツ語が完璧でない私にとっては、彼女たちのドイツ語はとても聞きづらく、同様に私が話す日本語訛りのドイツ語も彼女たちにはわかりづらいため、お互いに、

「Wie bitte?(なんて言ったの?)」

を連発しながら会話をしていました。

 

私は、美しく仕事をこなすフランス人女性のオードリーが一番好きで、彼女も私の話をよく聞いてくれました。
そして私は、自分が「辞めたい病」にかかると、数少ない心を許せる友人でもある彼女に、なんでも相談していたのです。
しかし、ある時、いつもは優しい彼女から、うんざりしたようにはっきりと言われたことがありました。

 「はぁ~、私ってやっぱりドイツ人と日本人の間でうまく仲介役ができないみたい。今日も日本のビジネスパートナーから、メーカーとのバンドルが消えるようなことになれば、そちらの責任ですよって言われるし、ブルーメ氏からは日本のメーカーが開発に着手するのが遅かったのだからうちには責任がないと言うし、間に入っている私はどうすればいいのよ~。もう、だめ~。もう、辞める~!!」 

オードリー 「またなの?本当に自分がしたいことを、いい加減決めたらどうなの!!」

 

このとき私は、いつもと同じように慰めてくれるとばかり思っていたので、彼女の言葉と表情にとてもびっくりし、いつまでもふらふらしてはいけないのだと、甘えてばかりいた自分の弱さを思い知らされました。

中国人のリンにも、仕事の愚痴を軽くこぼしたことがありましたが、「あなたは何がしたいの?」とたったひとこと冷たく言われ、その時にも、「甘えている自分」を痛感しました。
他人に愚痴を聞いてもらったところで、やはり自分で自分がどうしたいのかを決めないと、問題が根本的に解決したことにはならないのです。

彼女たちとの関わりによって、私の甘さに気付いた私は、まず、自分が本当にやりたいことを考えてみることにしました。
そして、見つけ出した答えは、「コミュニケーションサポートのエキスパートになること」だったのです。

それからは、仕事で辛いことがあっても、とにかく今自分がやってることは、「日本語とドイツ語のどちらも理解できる私」にしかできないことなんだと、自分で自分を励ます努力をするようになっていきました。また、愚痴もあまり言わないよう心がけました。同僚に嫌われてしまったら、できるはずの仕事もできなくなってしまうので、見放されないように頑張らなくてはと思うようになったのです。


2)「インターフェースになろう」

海外と日本の企業の間で、お互いの主張を尊重しつつ、コミュニケーションを円滑にサポートするためには、伝書鳩のように、ただ相手が言っていることを伝達するのではなく、それぞれの市場や文化に合った言葉に置き換えて相手に伝えることが重要です。私はこのノウハウを、日本人のお客様とのコミュニケーションの失敗から学びました。 

メールの書き方もろくに知らずに通信ソフト業界に飛び込んだ私。
入社して2ヶ月目、日本人のお客さんから、「あなたのメールの書き方がきつかったのでカチンと来ました。このままでは信頼関係がなくなるでしょう」という内容のメールが届き非常に強いショックを受けました。

日本ではビジネスパートナーのお客様を怒らせることなんて言語道断。ましてや私が送ったメールのせいだなんて・・・。
本当に取り返しのつかないことをしてしまったと頭の中が真っ白になってしまいました。
すぐに平謝りのメールとともに、先方が欲しがっていると予想される情報を送り、後日「あなたから頂いた情報に感謝しています」という返事がもらえたときは、感涙するくらい安堵したのを覚えています。

そして、なぜこんな大失敗をしてしまったかというと、ドイツ語の内容を1対1で日本語に訳してしまい直訳すぎたのが原因でした。

ドイツ語のオリジナル文章

「Wir verstehen nicht genau, was Sie meinen. Erklaeren Sie bitte noch einmal.」


私が書いた最初の訳

「あなたがおっしゃりたいことがよくわかりません。もう一度説明してください」


このとき、本来ならば、次のように訳さなければならなかったのです。

「大変恐れ入ります。~のように解釈しておりますが正しい認識でしょうか。もしも私の解釈が間違っているのでれあれば、大変申し訳ございませんが、再度ご説明を頂ければ幸いに存じます」

どういうことかというと、

ドイツ語から日本語に訳すときは、1対1ではなくて、1対2くらいの気持ちで時間をかけて丁寧に訳さなければなりません。
逆に日本語からドイツ語に訳すときは、1対0.5くらいでちょうどよいのです。前置きや重複する説明やあいまいな部分は省略して、日本人のお客様が伝えたい内容のみをフィルタリングして、ドイツ人に伝えなければなりません。そうでなければ、ドイツ人から、「いったい何が言いたいのかよくわからない」と言われることになります。 

ドイツ語は簡単で短めに、そして伝えたいことは最初に書く。日本語はあいまいで丁寧に、そして伝えたいことは説明の後に書く。日本語の場合、とくにネガティブな内容のときは、これでもかというくらい丁寧に書く。

それぞれの国民性を理解しながら文章が書けなければ伝わるものも伝わらないということです。


3)「NOだと思ったことは、NO!とはっきり言おう」


これは、11年間のドイツの会社員生活で、耳ダコができるくらい上司から言われた言葉でもあり、正直、いまだに完璧にマスターできたとは言えないノウハウでもあります。

日本市場担当として外国企業で働いている人は、きっとみなさん同じ疑問を一度は持たれたことがあるのではないかと想像しますが「自分がどちらの国の会社のために働いているか」というジレンマがありました。


例えば、私の場合、ドイツの会社のために働いているのか、それとも、日本のビジネスパートナーのために働いているのか、何度も悩んだことがあります.

日本市場独特のルールがあったりすると、そのことがわかる私は、最初は上司の要求を相手に伝える立場だったのに、なぜだか次第に、日本のビジネスパートナーが要求することを上司に伝え、説得する立場になっていきました。

結局、上司が譲歩するので、日本のビジネスパートナーには喜ばれるのですが、ブルーメ氏からは、「君はドイツの会社で働いているのだから、こちらの要求も強く伝えてくれないとだめだよ。NOが言えるようになってください。なんでも「ハイ、ハイ」と言うのではなく、できないことはできないと言うことも大切なんだよ」とよく言われました。

日本のビジネスパートナーと話をしていて例えば、「日本市場でより良く売るためには、通信ソフトの機能の強化が大切なんです」とお願いされると、私は日本市場の特殊性がよく理解できるので、「わかりました。上司と開発チームの伝えます」と言います。
そして、そのことを上司や開発部長に伝えると、「機能を強化するためにはコストがかかりすぎる。市場の大きさと開発費用がマッチしないので、新バージョンでは多機能を売りでいこう」と言われます。
でも、その多機能が日本市場には必要ないものであったりするので、本当に日本市場に適した製品なのかどうかわかりません。私は「今度の新バージョンの日本市場への投入がうまくいかなかったら、ブルーメ氏と開発部長を説得できなかった私の責任かもしれない」と思うようになり、眠れない日々が続きました。このとき夫が私にこう言いました。

「みどりはもっと自分自身が強くならないとだめだよ。いろんなことを自分の責任に感じすぎる。ドイツの会社のために仕事をしているのであり、日本のビジネスパートナーのために仕事をしているわけではないんだよ。ドイツの会社からお金をもらって働いているのだから、会社の言うことを正確に伝えるだけでいいんだよ」

このときの夫の言葉は私の心を落ち着かせてくれました。しかし、11年間会社員生活を送った中で、この「自分がどっちの会社のために働いているのか」という疑問は常にあり続け、悩んだり苦しんだりしながら交渉役を担っていました。

 

4)「上司とツーカーの仲になろう」

社長のアレックス・ブルーメ氏が私のことを気に入って採用が決まったことは、第二章でお伝えしましたが、私にとってブルーメ氏は現在メンターのような存在で、起業した今も私を100%さらけだせる相手でもあります。

彼とは最初から波長が合ったのですけれど、でもすぐに仲良くなれたわけではありません。日本に出張したときや、会社で仕事の話をするときなど、チャンスがあったときに、少しずつプライベートの話をしてお互いに理解しあうようになっていきました。ブルーメ氏は社長であり、日本市場を含むアジア市場担当セールスマンでもあったので、私にとっては直属の上司。話をする機会は本当に多かったです。


入社して1年4ヶ月目。
前述したように、同僚たちから「何がしたいの?」と尋ねられ自分がしたいことが見つかった私なのですが、いまいち自分に自信が持てないでいました。そして、思い切って、ブルーメ氏に相談することにしたのです。

私 「自分に自信が持てません。会社のためになってるのかどうかわかりません。どうしたらよいのでしょうか...」

ブルーメ 「日本市場は動いているし、日本のビジネスパートナーとの関係も良好だし、ぼくはハッピーだよ」

私 「ありがとうございます。とっても嬉しいです」

ブルーメ 「君がうちの会社に来てくれて本当によかったよ」

私 「ありがとうございます!」



日本で仕事をしていた頃、私はそれぞれの会社の上司から気に入られ、目をかけてもらえていたと思います。しかし、悩み事はやはり先輩や同僚や後輩と話をして解決することが多く、上司に悩み事を話すことはありえませんでした。しかし、ドイツ企業で働く上で、上司とツーカーの仲になっておくことは、仕事を円滑に進めるために必要不可欠なことであり、自分をさらけだせば、相手もさらけだして接してくれることを肌で学びました。

ブルーメ氏は、ときどき落ち込んで嘆く私に向かって、「大丈夫だよ」とか、「君はよくやってくれてるよ」と優しい言葉をその都度かけて励ましてくれました。そんなブルーメ氏の存在は、私がドイツ企業で11年間働き続けられた原動力でもありました。


5)「自分ができない仕事を、会社に上手に理解させよう」

このノウハウには本当に勇気と決断力が要ります。一歩間違えれば、「こいつは会社に必要のない人材」と会社に思わせることにもなりかねないからです。
でも、できない仕事を上司や同僚にわかってもらえれば快適に仕事ができるようになるのも事実です。ただ、自尊心を捨てる覚悟が必要ですが...。


入社して3ヶ月目。

販売会議の議事録を各自が順番に行うことになり、私は議事録が書けるほどドイツ語力がないのでそのことを正直に販売部長に伝えました。彼に言う前、本当にドキドキして手も汗ばみのどもカラカラになったのですが、議事録が書けると思われて販売会議が進行されてはチームのスタッフ全員に迷惑をかけることになる。そう思って、勇気を振り絞って伝えたのでした。

結果は、「わかった。議事録は書かなくていいよ」という返事。そして、ドイツ語や英語で商品説明をすることに自信がなかった私は、そのことをブルーメ氏に伝え、販売員としてメッセに同行しなくていいことにもなりました。

私は「自分ができること(ドイツ人と日本人との間のコミュニケーションにおける仲介役)」「できないこと(販売会議の議事録やメッセでの商品説明)」を把握して、会社に迷惑をかけず仕事を効率よく進めていくために、「できないこと」を伝える術を身につけたことになります。

そして、英語での通訳も私には無理なことも暗黙の了解になっていきました。

入社して4ヶ月目。

ファクス機の日本メーカーが会社を訪問しました。私は上司のブルーメ氏と一緒に打ち合わせに出席しましたが、質問内容がよくわからず、ブルーメ氏とお客さんは英語で直接やり取りしてくれました。まったく役に立たなかった私は、その瞬間はとても落ち込みましたが、英語がわかる日本人のお客さんには直接ドイツ人とコミュニケーションしてもらえばよいのだということをこのとき学んだのです。

会社が私を採用したとき、
もともとは、「日本市場担当兼販売チームのサポート」という仕事を私に与えよう思っていたようですが、結局私のポジションは「日本市場サポート」のみになりました。

日本市場がどんどん拡大していったことにより、私の週40時間の勤務時間が。日本人のお客さんとドイツ人開発者との間のコミュニケーションサポートで埋められるようになったという事情もありますが、「自分にできない仕事を、積極的に会社にアピールした結果」ということも大いにあります。
できないことを、しっかり伝えることは、海外で働く上では、決して恥ずかしいことではなく、重要なポイントだと感じています。

さあ、私の試行錯誤の海外就職経験から学んだ

「外国企業で快適に働くためのノウハウ」を、まとめてみますね。

•①  自分が本当にやりたいことを見つけよう

•②  インターフェースになろう

•③  NOだと思うこは、NO!とはっきり言おう

•④  上司とツーカーの仲になろう

•⑤  自分ができない仕事を、会社に上手に理解させよう

 

です!

この5つのノウハウが、みなさまの「気づき」になれば嬉しいです。

次回は、「パートタイムで働く日本人ママが中間管理職?でもどうやって?」といったテーマで書きたいと思います!お楽しみに!

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プロフィール

ゲッべルみどり

ゲッべルみどり

ペンパルで知り合い、遠距離恋愛を続けていた、ドイツ人の夫との結婚を機に1993年に渡独。

ドイツ語を猛特訓しながら、現地で就職活動を行い、最初にアルバイト・パートとして5年間ジェトロに就職。
その後12年間ドイツ企業3社で会社員として勤務。2004年からは、中間管理職として、ドイツ人の上司や同僚、部下と悪戦苦闘しながら働く。

転職、昇進、育児休業、復帰、解雇、失業など、さまざまな経験を経て、2009年に独立。
現在は、フリーランスで、ビジネスコーディネート兼ゲームのテストサービスを行っている。
2歳年上の夫、7歳の長女とミュンヘンにて3人暮らし。

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