子育てワールドリポート
世界で活躍するライター&ジャーナリストによるリレーコラム。
出産、医療、エコ育児など、様々な海外情報をお届けします
プロフィール
岩澤 里美 Iwasawa Satomi
雑誌編集、英国留学を経て、2001年よりスイス在。
月66万部発行のJALファーストクラス機内誌『Agora』、環境ビジネス誌『オルタナ』 などにスイスの話題を中心に寄稿。
欧州ほかアメリカの「最新ビジネス」も多数取材し、日経BPネット やJBpress(日本ビジネスプレス) に連載している。
在外ジャーナリスト協会「ufp」 理事。
岩澤 里美さんのブログ http://slasuisse.exblog.jp/
蜂の毒や、ゴールドも、薬になる
ホメオパシーは、ドイツの医師サミュエル・ハーネマン(1755~1843年)が確立した療法で、ヨーロッパでは広く実践されている代替医療の1つです。
ここでは、スイスを例に、ヨーロッパのホメオパシー事情を数回にわたりお伝えしていきたいと思います。
西洋医学では、強い薬を服用して病気を治すことが基本です。
これに対してホメオパシー療法では「強い薬で病気は治ったのではなく、病気が一時的に抑えられただけ。再発してまた薬に頼る」と考えます。
ホメオパシー療法で用いる薬はレメディと呼ばれ、植物、動物、鉱物と自然界に存在するあらゆるものが材料です。
これらの抽出物を希釈(薄める)・振とう(強く振る)して、液体のまま小さなビンに詰めたり、砂糖と混ぜて直径数ミリの球状(グローブリ)にします。
希釈度は高く、1.5リットルのジュースをプール(10m×4m×2m)に注いだ状態と同じこともあり、味や色は残りません。1000倍や100万倍に薄めたレメディでさえ希釈度が低い部類に入ります。希釈度が高くなるほど効き目が強くなるといわれます。
ホメオパシー療法の概念は、この「希釈した材料」が体の「治癒力」を高めて、結果的に病気が治るという考えに基づいています。
未だ、科学的には説明されていない療法であり、成分的には水に近い状態、またはほとんど水の状態のため偽薬(プラシーボ)とも批判されますが、治療選択の一つとしてはイギリス、フランス、ドイツでも広く認知され、保険も適用される場合もあります。
スイスでは、最も人気の代替医療
ホメオパシー療法は、スイスでは最も人気のある代替医療。とくに、小さな子供を持つ親たちの間で人気があります。
利点は、
① 副作用がないと断言できないが、表面に出にくい
② 病名ではなく、個人の体の状態に合わせる
③ 西洋薬と併用できる
④ 病気にかかりにくくなり、費用も安く済む
⑤ 患者の満足度が高い
などです。
そして、子どもに関しては、病気の初期段階、慢性的な病気(喘息、アトピーなどのアレルギー、消化の問題)、突発性の病気(感染症、中耳炎、下痢など)、そして性格や精神的発達(短気、引っ込み思案、注意欠陥多動性障害など)に効果があるといわれています。
診察時間は90分!
チューリヒ市郊外でクリニックを開いているダリア・フォン‐プランタさんは、10年以上の経験をもつホメオパス(ホメオパシー療法士)です。主にあかちゃんや子どもを対象として診療を行い、子どものアレルギーの治療法について雑誌でコメントするなど、人気の療法士のひとり。
ダリアさんによると、適切なレメディを正しく使用すれば、子どもの慢性の病気は均3~8ヶ月、重い病気だと1~1年半くらいで治るのだとか。
![]()
↑あかちゃんや子どもの患者が多いホメオパス(ホメオパシー療法士)、ダリア・フォン‐プランタ(Daria von Planta)さん。医師の資格を所有するホメオパスもいて、スイスでは現在、一般開業医全体の10%にあたる約300人がホメオパスだ。
しかし、同じ病気の子どもに、必ずしも同じレメディを処方するとは限りません。
その子どもにぴったりと合ったレメディを選ぶために、診察時間は十分に取ります。急性の病気の場合は迅速な診察になることが多いようですが、通常1~1時間半で何時間にも及ぶことさえあるそうです。
診察では、病気の症状のほか、生活習慣(食嗜好、寝相など)、天気による気分の変化、気性、家族の病歴などについて細かく尋ねます。回答するのは親。質問は細かく、子ども自身が表現するのは難しいためです。
レメディは診察終了後に回答データを分析して決めます。数千種のレメディの中から、症状や生活習慣、遺伝などを考慮して、ダリアさんは最適な1種類を選ぶのです。![]()
↑液体(奥に見えるビン2本)や球状(手前3つ)など、レメディには様々
な形状がある。
子どもは処方されたレメディを毎日服用します。
球状のグローブリなら噛まずにそのまま口内で溶かしたり、水に溶かしてかき混ぜて(振とうして)から飲みます。
液体の場合はビンを激しく振ってから数滴を水にたらして飲みます。液体の場合は、振とうしないと効き目がないそうです。希釈度の低いレメディ1本を終えたら、徐々に希釈度の高いものを服用していきます。この間、心配なことがあれば電話や検診をいつでも受け付けています。
料金は、診察代とレメディ代(1本2000円など)です。
短期滞在者も含めて、スイスに在住する人すべてに加入義務のある基本保険(民間会社から自分で選んで加入する)は、現在のところ利きません。基本保険に追加して払う「補助保険」に加入していれば、料金はすべてカバーされます。
一方、スイスではホメオパスの診察がなくても、希釈度が低いレメディは薬局で手軽に購入できます。
目が痒い、鼻水が出る、ケガをしたなどの軽い症状なら自己診断して買う人も多く見られます。1種類でこれら希釈度の違うものを混ぜたり、1種類ではなく数種を混ぜたレメディもあります。このように処方箋がない場合は「補助保険」も利きません(了)。
![]()
↑スイスの薬局で売られているレメディ。製造元はいろいろ。右は目薬(Weleda社、約1300円)、左は鼻水用グローブリ(Omida社、約1200円)
次回は、ホメオパスがレメディを選ぶときに利用する「サイクルとセグメントのモデル(CYCLES & SEGMENTS)」という理論について詳しく説明します。
※本文内の写真はすべて筆者撮影
==============
<次回予告>
子どものためのホメオパシー療法【2】 ~ 最適なレメディはどうやって決まる?











