子育てワールドリポート

世界で活躍するライター&ジャーナリストによるリレーコラム。
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フィンランドNo.5 フィンランド保育園&プリスクール事情

靴家さちこ

プロフィール

靴家(クツケ)さちこ/KUTUKE Sachiko
(本名:ステンルース幸子)

1974年生まれ。フィンランド在住ライ ター。青山学院大学文学部英米文学科を卒業後、米国系企業、フィンランド系企業を経て、フィンランド人の夫との結婚を機に2004年よりフィンランドへ移 住。共著に『ニッポンの評判』(新潮社)、『住んでみてわ かった本当のフィンランド』(グラフ社)などがある。2008年にはフィン ランドで初めて出産、二児の母となる。日本での長男の出産とフィンランドでの次男の出産を比較しながら綴った連載、「日本とフィンランド産み比べ」は『地 球で子育て!』のWebサイト(http://chikyumaru.net/chikyudekosodate/cat37/cat38/) にて好評掲載中。
Global Pressメンバー

 フィンランドの保育園事情 

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↑保育園、プリスクールの発表会などに使われる体育館ホール。

フィンランド語で保育園のことを「パイヴァコティ」と言います

"päivä(日)"+"koti(家)"、つまり「子ども達が一日をすごす家」という意味です。

そのパイヴァコティに長男を預けようと、ケラヴァ市のサービス課へ足を運んだのは2005年秋のこと。

当時は、いつフィンランド以外の国に移動するか分からない状態だったので、家族の共通語は英語、息子と二人だけの時に限り、私は日本語、夫はフィンランド語で会話していました。

そのような環境で育った息子が、1歳6カ月で話せたのは、英語、日本語、フィンランド語を合わせても4語だけ。同年代の子ども達との歴然たる違いに焦りを感じた私は、夫に息子を保育園に通わせることを提案しました。 

当時は私がまだフィンランド語が話せず、家での共通語が英語だったこともあって、インターではないのだけれど英語で話す保育園というのがあると聞き、そちらの門戸を叩きました。

ところが園長先生の話によると、園内で英会話を始めるのは3歳からで、英会話を導入してからも実際には多くの子ども達がフィンランド語で話してしまうとのこと。

そればかりか、私と息子がフィンランドに慣れる為にもと、普通の保育園を勧められてしまいました。家に戻ると、しぶしぶ、普通保育園への願書を記入し、市に提出しました。 

保育園の保育料は、保護者の収入によって上限、下限が設けられており、上限はフルタイム保育で一ヶ月230ユーロ、下限は21ユーロ(2008年8月現在)。日本と比べて手頃のような感じがしますが、育児手当がもらえることを考えると、育児休暇を取って自宅で育てた方が、よりお得に感じるフィンランド人は少なくないようです。

当時は知識も浅く、フィンランドの保育園はほとんどが公立なのだから、誰もが家から一番近いところへ通わせるのだと思い込んでいたのですが、実際には、ヘルシンキから北30キロ程のところにあるこの町にも、もっと多種多様な保育施設があることが分かりました。

◆保育園
(3カ月以上の赤ちゃんから6歳まで。半日からフルタイムと選べるが、ほとんどがフルタイムの共働き家庭向け):

普通/スウェーデン語/ドイツ語/英語/美術/シュタイナー/モンテッソーリなど

 

◆レイッキコウル
(「遊び学校」という意味/3歳以上向け。ほとんどが午前中で終わり、育児休暇中もしくは家で仕事をする親がいる家庭向け。文字通り遊びが中心で、保育園のような行事やその練習などが少なくのびのびしている)週に2、3回で25から35ユーロ(自治体により開催日や料金が異なる

普通/音楽/体操など

 

◆ケルホ
(英訳するとクラブ)日本の児童館のような、赤ちゃんから入園前の子どもまで、ママと一緒にお友達と遊ぶことができる施設。2~3時間までなら子どもを預かってくれる所もある。ほとんどの活動が建物の中で、地域の教会が古くから組織している)無料(活動内容により有料の所も

◆普通の教会
(フィンランドで多数派にあたるルーテル系)の/ルーテル以外の宗派の教会の/フィンランド語の講習も受けられる外国人のママと子ども達向けのケルホ

 
◆資格をもった個人が自宅で運営している、少人数向けのデイケア施設
(共働き家庭でも、どんな家庭でも、保育園だと人数が多すぎてうちの子には向かない、あるいは、ここで慣れてから次は保育園と考えている親達向け)

保育園と同様に、保護者の収入の大小によって上限下限が設けられている料金体系。

◆公園おばさん
(事前に電話予約をして2~2.5時間、公園の中で子どもを見ていてもらえる)ヘルシンキ市内の場合、1時間4~5ユーロ。ケラヴァ市については無料。

おばさんは各公園もしくは児童館の庭の遊び場に常駐しており、ヘルシンキの場合、市で雇われている人と個人で経営している人と両方のケースがあり、いずれも公園や児童館からおばさんの電話番号を案内され、直接予約を、ケラヴァの場合、児童館に電話で予約を申し込む。2歳以上の幼児を家庭保育しているママたちが活用。育児の合間の息抜きや美容院に行くなどの雑事に使える他、子どもが保育園入園前にママとちょっと離れる練習にもなる。

   

息子の保育園体験

 かくして、息子は、自宅から歩いて20分程のところにあるパイヴァコティへ通うことになりました。朝8時から朝ごはんも園で食べ、午後4時頃にお迎えに来る毎日--これは彼にとって、人生初めての大冒険でした。

入園が決まると、早速、面談に呼ばれて、息子ともどもパイヴァコティを訪ねて行きました。

息子の担任の先生は、明朗活発な女性で、「フィンランド語ができなくて......」とわびる私に、「私も英語下手なんで......」と頭を下げ、ところどころ思い出せない英単語に、自ら大爆笑しながら園内を案内してくれました。私が息子を抱きながら、先生の後を付いて行くと、園児達が「その子だあれ?」「なんでいるの?」とついて来ます。 

園内ツアーが終わると、数枚の紙に書き込みながら、以下のような確認事項が聞かれました。

•1)  食べ物にアレルギーはないか

•2)  お昼寝をさせても構わないか--昼間寝かしてしまうと、夜遅くまで寝てくれないので困るという親がいるので

•3)  園内でビデオを見せるとき、見せて構わないか--あまり見せないようにしている親がいるので

•4)  両親、子どもの宗教は何か、宗教上、参加させられない行事はあるか

 

それらの質問に一通り答えると、翌日から、まずは慣らし保育に午前中一週間だけ、母親の保護観察付きで来てはどうかと提案されました。持ち物は、今使っているサイズのオムツ1ケースと、着替え一式と上履きだけ。早速帰りに、スーパーに寄って調達しました。

翌朝8時に間に合うように息子を起こして、園に滑り込むと、クラスの入り口で園児達が出迎えてくれました。8時を回っても「フオメンタ(おはよう)」と言いながら、ゆったり教室に入ってくる子どももいます。「8時までに来なくてはならないんですよね」と先生に確認すると、「朝ごはんは8時から8時半までに用意されるから、来る方もそれぐらいでいいのよ」とのこと。こういう朗らかな先生との出会いが嬉しく、私はパイヴァコティがすっかり気に入りました--息子は、隙があればドアノブに手をかけて逃亡を企てていましたが。

園でのスケジュール

息子のクラスは1歳から4歳児がひとまとめになった15人のクラスで、その15人をさらに年齢ごとに3つのグループに分けて、5人につき一人の先生がつき、さらに、全体に一人お手伝いさんが一人ついていました。そして、園児達の一日のスケジュールは以下の通りでした。

6時半から、親の仕事の都合で朝が早い子どもは、事前に連絡を入れて早めに登園。他の子ども達が登園してくるまで、体育館で遊びながら待機。7時半にはそれぞれの教室に入室。


8:00-8:30 朝ごはん

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↑朝ごはんは、オートミール粥などの軽くて温かくて栄養価の高いものが中心。みんなで食べるとスプーンも自分で持ちたくなる。

9:00-9:45 教室の中で年齢別の小グループに分かれて、屋内遊び。(歌を歌ったり、詩を読んだり、手芸や工作、体育館で身体を使った遊びなど)

9:45-11:00 トイレ(まだ出来ない子はトイレトレーニング)を済ませてから外遊び

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↑小さいうちは、外で思いっきり遊ばせることが良しとされるフィンランド。外遊びの時間が一日5時間に達することも。

 

11:00-11:30 お昼

11:30-14:00 口をゆすいでトイレを済ませ、パンツいっちょになってお昼寝

14:00-15:00 目が覚めた子から順番におやつ

15時半から、トイレに行ってから外遊び。

  entei-fuyu.jpgのサムネール画像

↑冬の園庭。雪が降ったってなんのその。たくさん着れば、たくさん動けば寒くありません。日照時間が身近い冬は、午後3時でもこんなに暗い。さすがに-20℃を下回る日は外には出ません。 

16時頃から親が迎えに来た子どもから順に帰宅

17時半   閉園

 

慣らし保育期間中、私はただ息子に付き添っていればいいのかと思っていたら、ちゃんと先生の指示に従って、息子と離れる訓練も同時進行。その緻密な作戦は、以下の通りです。

1日目:外遊びの途中で、先生の指示により、私は職員室で休憩時間中の先生方と一緒に10分程お茶を飲みに行かされる。息子のそばから離れる前に、息子に「行ってきます、バイバイ」と言って、息子も私に手を振る練習。わけがわからずポカンとする息子。

2日目:私のお茶の時間が15分に伸びる。また息子から離れる前に「バイバイ」の練習。大泣きされるが、先生が抱っこしてなだめる。

3日目:お茶の時間が20分に。泣かれても構わず「バイバイ」の練習。やはり先生に抱っこされているが、戻ってくる頃には泣きやんでいる。

4日目:お茶の時間が30分に。やはり泣き叫ぶが、「バイバイ」の練習。戻ってくるとケロッして先生と手をつないで歩いている。泣きは芝居か......?

5日目:ついに「お茶ではなくて、買いものにでも行ってきて下さい」と先生に言われ、30分程園の外に出る。門を出る前に再び「バイバイ」と号泣。

 

翌週から、二週間ほど午前中だけの半日保育が続き、朝の登園の際には「バイバイ」の練習も続けました。息子は一カ月ほど、朝保育園に近付くと泣きだしましたが、一旦着いてしまうと、朝ごはんを目指して振り向きもせずに行ってしまうようになりました。

保健センターとの連携、独特の教育に高福祉社会を実感

息子は、非常におとなしく、協力的で、常にいい子だと言われてきましたが、一年経ってもお友達と一緒には遊ばず、言葉やコミュニケーションに遅れが目立ち、3歳になった時には年中クラスにも進めず、もう一年同じクラスでやり直すことになりました。(息子の保育園では、1歳から4歳、3歳から5歳、4歳から6歳と言うように、年齢に重なりを持たせ、個人の能力差でクラス分けをしていました)その際に、団体行動にも付いていけていないことも指摘され、自閉症の可能性を検討してみてはどうかと、担任の先生から助言されました。

早速、夫と共に、息子を保健センターのネウヴォラ(相談機関)に連れて行って、言語、体育、精神科の3分野の専門家に診てもらいました。

プライバシーの保護の為、保健センターでの検査結果は両親の許可なしに保育園に開示されることはありませんが、このような場合には両親が用紙にサインして保健センターと保育園で情報交換をします。園での様子も、担任の先生によってレポートが書かれ、保健センターのエキスパート各位の手に届きました。

約一年に渡る検査が続きましたが、3人のエキスパートの意見を総合した結論としては、自閉症とはまだ断定しきれず、仮にそうであったとしてもかなりの軽度なものだろうということで、経過観察を続けることになりました。そして、検査にかかった費用は全て無料。フィンランドが高福祉社会と呼ばれる所以を実感しました。 

息子は、6歳になるまでの約5年間を保育園に、6歳になってからは同じ建物の中にあるプリスクールにも一年通いました。

プリスクールとは、就学前教育のことで、フィンランドでは全6歳児に対して無料で行われます。息子が通った保育園にはたまたまプリスクールもついていましたが、無いところの場合、新たに近所でプリスクールだけ探すことになります。

小学校と同じ敷地内にあるプリスクールもあります。プリスクールでは、保育園と比べて、小学校入学を控えて、机に向かっての勉強や手工芸、そして先生のお話を聞く練習が多くなります。プリスクールは就学前の一年間。勉強そのものよりは、学校とほぼ同じ時間割(朝食を家で食べ、昼食を挟んで12時半には終了)に慣れさせることが重要視されています。

が、共働き家庭には厳しいプログラムなので、16時までは保育園に半日預けているケースがほとんどです。その間に園で息子が教わってきたことの内容は、以下の通りです。 

保育園:2~3歳児からパズルやボードゲームで遊ばせ、各家庭でも保護者が遊んであげるように指導。パズルは図形の感覚を、ボードゲームではルールや順番などの社会性が育める。

プリスクール:週に一度、一日に1個か2個のアルファベット(大文字だけ)を学習。(書き取りは少量。小学校に上がってからの学ぶ楽しみが無くならない配慮がなされている)授業中にはクラス全員が必ず手を上げて何か発表することを奨励。(小学校での発言の練習。話すのが下手な子や恥ずかしがり屋さんは踊りや歌などの得意技を一つ披露するだけでもいい)針と糸を持たせてフェルトと綿でできたぬいぐるみを作成するなど、高度な手芸も。また、外国人をクラスに招く「文化の日」や人形劇観賞なども。 

保育園もプリスクールも、日本と比較すると、春パーティーやクリスマス会などの発表会が年に2回あるのですが、その練習が一か月にも及ぶものの、リハーサルは2回ぐらいで、かなりぶっつけ本番です。

先生に助けられながら子ども達がてんでばらばらに動いている様子は、一糸乱れずお遊戯し、足並み揃えて行進する日本の園児達と比べると未熟に見える半面、それに慣れてしまうと今度は日本の園児達が、窮屈でかわいそうなようにも見えてきます。運動会に至っては、なんと先生と園児達だけでやってしまいます。

地域によって、園によって、先生によって、システムも内容もまちまちですが、息子の通っていた保育園、プリスクールは、評判が良く、躾も結構しっかりしていて、子ども達と真正面から対決する先生の姿を見かけることが多々ありました。唯一気になったのは、外遊び中の園庭で先生同士のトークが盛り上がってしまい、監視の目が緩くなることぐらいでしょうか。そんな大らかさもひっくるめて、息子ともども家族でお世話になった保育園、プリスクールに、私は二重丸、三重丸をあげたいと思います。

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↑ボードゲーム。2歳から、3歳からボードゲームに親しむ。神経衰弱のようなものが多い。

 

 

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ッカーには名前も書いてあるが、覚えやすいようにアニメや絵本のキャラクターの絵も飾ってある。息子のキャラクターは「ムーミンパパ」。

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