子育てワールドリポート

世界で活躍するライター&ジャーナリストによるリレーコラム。
出産、医療、エコ育児など、様々な海外情報をお届けします

フィンランドNo.11 男女平等の国、フィンランド・ワーキングマザー事情

靴家さちこ

プロフィール

靴家(クツケ)さちこ/KUTUKE Sachiko
(本名:ステンルース幸子)

1974年生まれ。フィンランド在住ライ ター。青山学院大学文学部英米文学科を卒業後、米国系企業、フィンランド系企業を経て、フィンランド人の夫との結婚を機に2004年よりフィンランドへ移 住。共著に『ニッポンの評判』(新潮社)、『住んでみてわ かった本当のフィンランド』(グラフ社)などがある。2008年にはフィン ランドで初めて出産、二児の母となる。日本での長男の出産とフィンランドでの次男の出産を比較しながら綴った連載、「日本とフィンランド産み比べ」は『地 球で子育て!』のWebサイト(http://chikyumaru.net/chikyudekosodate/cat37/cat38/) にて好評掲載中。
Global Pressメンバー



「男女平等」な「働く女性の国」、フィンランド

フィンランドといえば、25歳から54歳までの女性の就業率が86%(自営業、フリーランスは含まず)、さらに70年代から既に共働き率が70%という、「男女平等の国」でもあります。

付加価値税(VAT)が22%(食品などは17%)に、所得税(累進課税制)と地方税を合わせると収入の半分近くが税金に取られてしまう国では、男女ともに働かなくては家計が成り立たないというのも理由のうちですし、そうでなくてもフィンランド人は、気候柄、男女ともに家でじっとしているのが苦手な人達でもあります。一年の半分が暗闇と寒さに包まれるこの国では、外に出て何かをして気を紛らわしていないと精神衛生が持たないのです

働く女性、育児をする女性のどちらをも支援する社会保障


フィンランドでは、産前産後を含む「母親休業(産休)」と、両親のどちらかが取得できる「両親休業(育休)」の両方を合わせて263日間取ることができ、その間、雇用先からの給与は派生しませんが、国から収入の約70%が保障されます

父親にも18日間の父親休業(産休)があり、父親も新生児のお世話に精を出します。保育園には9カ月から預けられるので、早い人では3年分の育児休暇を使いきらずに、子どもが9カ月から11カ月ぐらいになったところで職場復帰します。

保育園への入園の希望を出すと、大概4カ月ぐらいは空きが無く、入園待ちになります。が、急に働かなくてはならない事情がある場合には、自治体に対して2週間以内に市内の保育園に空きを見つけなければならない責任が生じ、何が何でもどこかに入園させることできる仕組みになっています。また、育児休暇を終えて職場復帰した際には、休暇に入る前と同じポジションに戻ることが保障されています。

また、保育園を利用せずに家で育児を継続すると、子どもが3歳になるまでは、国から月額約300ユーロの「在宅育児手当」が支給されます。小額ではありますが、この手当は、仕事を一旦お預けにして育児に専念することを選んだママ(パパ)達への、「育児」というとても重要な仕事に対する報酬になっています。さらに、子どもが17歳になるまでは養育手当も支給され、第一子では100ユーロ、第二子では110.50ユーロというように、子どもの数に応じて支給額が増えます

これらの社会保障制度と「人は人、自分は自分」という「個人主義」が追い風となって、フィンランドでは、何歳までに保育園(幼稚園はありません)に入園、という明確な節目がありません。在宅育児手当を収入源の足しに「3歳までは何が何でも家で育てる」ことにした人、「やっぱり職場復帰しなくていいかも」と考え、専業主婦になることを決意した人、夫婦ともに自営業なので「家で子どもの面倒を見てあげられので」という理由で6歳からのプリスクールまでは家で面倒をみる家庭と、育児スタイルは家庭によって実に様々なのです。

ある、共働き一家の一日

さて、ここで、一般的な共働き一家の一日の様子をシュミレーションしてみましょう。

 6時 起床

7時 パパ出社

8時 子ども達を保育園に送った足で、ママ出社

8時半~10時 その日の時間割に応じて、小学生の子ども達は各自一人で歩いて登校

16時 保育園にパパが帰宅途中に寄ってお迎え

 帰宅時にママが、スーパーに寄って夕飯の準備

 小学1、2年生は学童保育が終わる時間。一人で歩いて帰ってくる。

 小学生の宿題指導はパパが担当、ママが確認。

17時 夕食

18時 音楽、スポーツ、美術などの習い事に子ども達を送り迎え。(スポーツ系はパパ、音楽、芸術系はママという風に分業)

19時 お夜食

20時 子ども達就寝(寝かしつけにパパが読み聞かせをする率高し)

22時 親達も就寝

 

送り迎えは、パパとママの職種や会社の制度によって担当を決めます。長男が通っていた保育園では、送り迎えの両方にママが通ってくる家が多かったですが、一般的なのは、ママが一足お先に出社して、パパが会社のフレックスタイムを利用してゆっくり子ども達を送り届けてから出社、ママは早めに出社した分だけ、帰りは定刻通りに帰り、家で夕ご飯の準備というスタイルだそうです。
 

ワーキングマザーの時間のやりくり

フィンランド人のママ達は、この「帰ってきてから」の時間が慌ただしくならないように、平日は、買い物はなるべくまとめて買いをし、出来合いの料理も活用しながら、なるべく料理を簡潔に済ませるようにします夕食は17時と早めですが、ほとんどの企業が16時には終業しているので、一家そろっての団らんの時間になります。そして、寝る前にもう一度、シリアルやオートミールなどのお夜食も食べるので、夕飯も日本人だったら「後もう一品」足したくなるような軽め夕食で大丈夫。お夜食は二度目の家族団らんの時間になります. 

時間さえあればもっと料理に腕をふるいたいママ達は、週末に手の込んだ家庭料理やおやつ作りに精を出します。が、その料理を筆頭に、週末にはまとめて一週間分の洗濯や庭の手入れなど、やるべきことは山積みです。というわけで、掃除に関しては、掃除サービスを利用している家が多いです。掃除サービスに家の鍵を渡しておいて、週に一回、平日の午前中の家族が出払っている時間帯に済ませてもらうことが多いです。

本当に「男女平等」なのか?

ここまで書くと、どうもママばかりが忙しくてパパは?という印象を与えますが、フィンランドは大工、修理工、庭師などの業者を利用せず何事もDIYする文化の国なので、週末は金槌を握って家のどこかを修繕や改築している父親の姿が一般的です。さらに夏は芝刈り、冬は雪かき、雪下ろしなど、(ついでにごみ出し)外での力仕事は全て男性の仕事です。というわけでフィンランドの働く女性達から、家庭内での男女不平等の不満を唱える声は、あまり多くは聞こえません

とはいえ、パパの仕事が長引いて子ども達のお迎えの代理を引き受け、子どもが風邪を引いたら会社を休み、子どもが生まれてから定刻通りに家に帰れる業種に転換するのは、「ママ」というのが一般的です。さらに給与の面でも、女性は男性の8割と不平等があり、この辺に関してはブーイングの声が高いです。

しかしながら、身の回りのフィンランド人女性達に、ワーキングマザーの人生について聞いてみると、みな一様に「全てを手に入れることは不可能だわ」と達観しています。育児に関しても「夫が、あれもこれもやってくれない」という愚痴よりは、「男女平等社会では男の人だって、男らしさにしばられずに好きなだけ育児参加をする権利があるのよ」という温かい(あるいは力強い)、夫に対する呼び掛けが多いようです。これは、「男女平等=女性が男性のようになること」ではなく、「男女平等=男性が男性らしく、女性が女性らしく、ともに得意分野を活かしてお互いを尊重すること」という考えが浸透しているフィンランドならではのアプローチだと言えるでしょう。


     Finland-kutuke-1.jpg

通勤・通学客でにぎわうヘルシンキ中央駅。フィンランドは車社会ではあるが、時間が見えやすい電車通勤をするワーキングマザーの数は多い。

 

    Finland-kutuke-2.jpg

ゆとりのある育児休暇中に人気の、赤ちゃんと一緒の習い事。こちらはベビー&ママのダンス教室。

 

  Finland-kutuke-3.jpg

赤ちゃんと一緒にできるベビー&ママヨガ教室。こちらには私も次男と通いました。

世界の子育て情報募集中!

コメントをする

投稿していただいた情報は、基本的にサイト内に掲載させていただきます。
ただし、コメントの内容で、編集部が不適切と判断した場合は掲載しない場合があります。特に、明らかに営業目的と思われるコメント、特定の個人や団体等を攻撃するコメント、人種差別と思われるコメントなどは、削除させていただきます。
また、掲載にあたり、誤字脱字等が明らかな場合は、送っていただいた方に断りなく修正することがあります。
掲載された情報・コメントの著作権は「世界の子育て研究所」に属し、加工・再利用させていただく場合があります。

コメントネーム
【必須】
メールアドレス
【必須】
URL
コメント内容
世界の子育て研究所とは
世界の子育て情報募集中!
メガ★お母さんになろう!~海外で、仕事もプライベートも成功させたいあなたへ~
FumieのBlog〜多文化を人生のスパイスに〜
メルマガ登録